« 2020年1月 | トップページ | 2020年3月 »

2020年2月

2020年2月28日 (金)

雛段の添え雛(「狆引の官女」他)

こんにちは。Dsc_1806
 お雛様というと、段飾りと呼ばれる、男女一対の親王を最上段に以下、三人官女・五人囃子・随身・衛士が花の飾り物や雛道具とともに段ごとに飾られる、お決まりものの雛段が、まず思い浮かぶと思います。

Dsc_0298  しかし、昭和40年代くらいまでは、そのほか、親戚の家々からそれぞれ贈られる様々な人形も雛段の周りに飾りました。それらは東京の人形屋さんでは「浮世物」と称していたようです。「日本人形史」昭和59年刊 山田徳兵衛によると、『浮世物は大正を経て、昭和十五年ごろまでさかんに売られた。浮世物には、・・・えびす・猩々・浦島・舌切雀・花咲爺・弁天・手古舞など実に種類が多かった』と書かれています。
Dsc_0297 「添え雛」という言い方も使いますが、いずれにしろ浮世物(添え雛)の種類は様々で面白いです。蝶の舞、鶴亀、高砂、太田道灌、塩汲(しおくみ)、小野小町、玉津島明神、神功皇后、舌切り雀、花咲か爺さん、浦島太郎、桃太郎、天神さん、狆引他を南アルプス市では収蔵しており、安藤家住宅の雛祭り期間中に展示しています。

 Dsc_0294 ←中でもこちらの「狆引ちんひき」というのは、官女が狆(ちん)という小型犬を引いているという風俗を描写した人形で、大正時代の終わり頃まで人気のモチーフだったそうです。
 前記の日本人形史によると、『この狆引は大正の末ごろまで人気を得ていた(狆が流行していたのである)。狆引は昭和になると流行しなくなった』とあります。狆という犬は、日本固有種で日本で座敷犬または抱き犬として改良繁殖され、特に犬公方と呼ばれた徳川綱吉も愛玩したそうですから、江戸時代に花開いた雛人形文化にはもってこいの題材だったに違いありませんね。

Dsc_0299  その他、山梨ではこれ以外の独特の添え雛として、押絵や裃雛、横沢雛がありました。

「押絵雛」紙で型を取り、芯に綿を入れ、その上を布で包んだもの。江戸時代に武家の奥方の内職として製作されるようになるが、幕末から明治に甲府の雛問屋でも多くつくられた。

Dsc_0303_20200228144701 Dsc_0302

Dsc_0301「天神さん」学問・雷電・農耕の神様とされる菅原道真の姿をかたどった人形。明治時代までは、上巳の節句の折、女の子には雛人形を男の子には天神人形を贈る習慣があった。

その他、学問の神様である天神さんも雛人形に交じって飾っていたといいます。明治時代までは、上巳の節句の折、女の子には雛人形を男の子には天神人形を贈る習慣があったからです。
 令和最初の安藤家住宅ひな祭りの床の間にも天神さんを飾りました。「おやっ!なぜ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうことです。
 Dsc_1807 Dsc_1804 どうぞ、ひな人形は、バラエティー豊富な、さまざまな添え雛(浮世物)の世界も、令和2年4月6日まで開催の安藤家住宅ひな祭りでお楽しみください。

2020年2月18日 (火)

節分の「鬼の眼」を発見!

こんにちは。
今年の節分に、現在では見かけることが少なくなった「鬼の眼」に出会いましたので、ご報告します! 場所は甲西地区落合で、小学校のすぐそばのお宅の庭先にそれは設置されていました。
Dsc_1789  ←甲州の伝統的な節分に欠かせないものといえば、「鬼の眼」。これですよ!
 屋根より高いところに、「手すくい」と呼ばれる竹製の麺類をすくう道具がくくりつけられていますでしょ。

 Dsc_1796 「鬼の眼」には手すくいの他に目の粗いかご(目駕篭)を使用する場合も多くあります。

そのかごの目は鬼の眼であり、今後起こりうる悪いことの「芽」にも見立てています。

ですから、人々はこの「鬼の眼」に向かって「鬼のまなこをぶっつぶせ~!」と大声で唱えながら炒った大豆を投げました。

この「め」をたくさんつぶすと、一年の災いや不幸が減少するという信仰があったからです。


Dsc_0043_20200218161601  そして、さらに「鬼の眼」をよくみると、とげとげの葉っぱの枝も一緒にくくりつけられていますね。このとげとげ葉っぱの木はネズミサシという本名ですが、地元では「バリバリの木」と呼ばれています。手すくいに依りついてくる鬼(悪いもの)をそのトゲトゲチクチクで痛めつけたりするために付けるのかもしれません。

 実際には、豆を撒きながら「鬼は外」の掛け声で家の中から鬼を追い出していき、戸外にでて、軒より高く立てかけたかごに向かって「鬼の眼をぶっつぶせ~!」と勢いよく豆を投げつけます。

Dsc_1718  また、その匂いと煙で悪魔を退散させ、様々な災いから家を守るため、門口には焼いたイワシをヒイラギの枝に刺して結わえました。

山梨県内各地の旧町村誌をみると、そのイワシを焼く時に、悪い虫や鳥、獣、苦手な人等の名前をあげて「○○の口焼き・・・」と唱えながら「ペッペッペッ」とつばを吐きかけて、黒くなるまで焼いたなどと記述してあります。
 例えば、「稲の虫の口焼き、桑ぬすっとの口焼き、青虫の口焼き、○○のおばあの口焼き!?・・・」など、その呪文には、各家々でかなりのバリエーションがあるんですよ。

Dsc_1714  取材させていただいたここ落合のS家では、「ネズミの口焼きペッペッペッ、ムカデの口焼きペッペッペッ、マムシの口焼きペッペッペッ」の3種類を、繰り返し唱えながら焼いておられました。女衆(おんなし)が、七輪の上でもうもうと煙を吐き出すいわしを箸でひっくり返しながら、そろってリズムをつけて、まるで歌っているかのように呪文を唱えていて、とっても楽しそうでしたよ!

Dsc_1715
Dsc_1697 このように、現在でも八十代のおじいちゃまとおばあちゃまをはじめ、三世代で甲州の節分民俗を守りつないでいるこのS家には、この時期、庭に立つ「鬼の眼」を面白がって、お隣の落合小学校の子供たちが見学に来ることもあるそうです。そんな時には、おじいちゃまがやさしく解説してあげるんだとか。ステキですね!

 


 昭和40年代初めころまでは甲府盆地周辺地域ではどこでも普通に見られた節分風景なのですが、いまでは忘れ去られつつあるようです。貴重な民俗をいままで絶やさず続けておられるご家族とお会いできたことは、○博調査員にと って大きな喜びでした。

Dsc_1789

 

 

こちらのS家で行われた令和最初の節分の様子は、東京キー局の朝のテレビ番組で紹介されたので、偶然ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか?来年の節分には、市内で「鬼の眼」を立てるご家庭が増えるといいなと願っています。

 

Dsc_0042_20200218161601ふるさと文化伝承館にも季節展示として、節分の鬼の眼を飾ってみました。ちょっといい感じでしょ♡ 

« 2020年1月 | トップページ | 2020年3月 »