徳島堰の魚捕りは夏の楽しみ
今日は久しぶりに午前中からお日様がピカピカで暑くなりました。ようやく梅雨が明けましたね。
八月に入り、暑さもひとしおですが、当館(南アルプス市ふるさと文化伝承館)では、テーマ展「開削350年 徳島堰」(令和3年4月18日まで)を開催中です。
展示資料の一部には、涼しげな堰の水場を再現したコーナーがあり、堰沿いに住む人々の夏の楽しみのひとつであった、魚捕りの様子と道具を展示しています。
本日は、その水場コーナーの民具資料をご紹介したいと思います。
← 筌(うけ・もじり):ドジョウやウナギなどの魚類の習性を利用して生捕りするための竹ひご製の道具です。中に餌を入れて口を紐や竹輪で縛り、夜のうちに水に沈めておき、翌日の明け方に取り上げます。餌の匂いにつられた下流の魚が底に開いた穴から入り込み逃げられなくなるという仕組み。
←カンテラ:韮崎市及び南アルプス市域では、携帯用の手持ちの灯火具の総称として、この名で呼んでいました。
ガンドウ:提灯の一種。釣鐘型の内部にあるろうそく立てが自在に回転して常に垂直になり、火が消えることがないように2個の金輪を取り付けています。現代の懐中電灯と同じ役割を持つものですが、17世紀初めごろから使用されていました。
←(もり):ドジョウやウナギなどの魚類を、先端に着けた金属の刺突具で仕留めるための棒状の漁具。
民具の展示棚にも、徳島堰にまつわる民具の展示がありますので、是非ご覧ください。
ビンブセ:ハヤなどの小魚を捕るためのガラス製の筌(うけ)。蚕のさなぎなどを餌として中に入れて、草の生い茂る水辺の木に流れないようにひもで縛ってくくりつけ、水に沈めて仕掛けました。
魚籠(びく):捕った魚を入れる籠。この資料は、腰にひもでくくりつけるようになっており、腰が当たる側には板が貼ってあります。その板に蓋が取り付けてあり、蝶番(ちょうつがい)のように開閉できます。通称「甲州魚籠」と呼ばれるタイプです。
堰の魚捕りを再現したコーナーの隣には、徳島堰沿いの韮崎市神山町鍋山で育った、ノーベル生理学・医学賞受賞者の大村智先生の思い出を、そのご著書から紹介するコーナーを作りました。
↑ 左:徳島堰のツケエバタ(洗い場) 右:南アルプス市飯野を流れる徳島堰
幼少期の大村先生がお父様と徳島堰へウナギを捕まえに行ったとき、『ウナギが太平洋で産卵・孵化して富士川を上り、堰までやってくること』を教えてもらい、好奇心をかきたてられたことを綴っておられる場面を紹介させていただきました。
テーマ展「開削350年 徳島堰」は、全体的には350年という歴史の重みと偉業を感じられるような構成を目指しましたが、その中にあって、堰の水辺コーナーは、一服の清涼剤となるように意図した気軽な展示です。
伝承館の受付職員が苦心して手作りしたドジョウやウナギの出来も、紙粘土製にしてはリアルな完成度だと思います! ぜひ、小さな子供たちにも興味を持ってもらえたらうれしいです。
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