ハエ捕り棒とハエ捕り瓶とハイトリック
こんにちは。
令和5年6月21日(水)まで開催しておりますテーマ展「ナニコレ!昔の道具」展に展示中の「ハエ捕り瓶」と「ハエ捕り棒」「ハイトリック」について、今日はご紹介したいと思います。
このテーマ展は、懐かしくて、新鮮な驚きを与えてくれる、昭和時代まで使われていた生活道具を300点以上展示しており、様々な展示資料を前に来館者様と当館スタッフとが和やかに会話する場面が多くみられます。
〇博調査員も、展示資料に付随する思い出話や使用実感などをお客様から直に採取できる貴重な機会をいただけたと感謝しております。
このたび、多数の来館者様とのこのようなやり取りの中にご縁ができ、是非収蔵をしたいと思っていたガラス製の「ハエ捕り棒」を市民の方より寄贈していただきました。
家の中で養蚕が盛んに行われていた昭和30年代までは、殺虫剤を家屋内で使用することは少なく、現代よりも家の中にハエ等が入り込むことが多くありました。薬剤を使用せずに害虫を捕獲する器具をテーマ展でも展示しております。
←「ハエ捕り棒」:天井に止まったハエを捕まえる、ガラス製の棒。ラッパ形の口で天井に止まっているハエを閉じ込めると、逃げようとしたハエは硝子の内側に当たり、管を滑り落ちて、下の丸い部分に入れておいた水に落ちる。明治時代から昭和時代にかけて使われた。(伝承館スタッフ熱演!)
←ハエ捕り棒の使い方図(伝承館スタッフ作画・モデルはピース!)
このハエ捕り棒はガラス製の上、ハエを捕獲するために部屋の中を持ち歩くので破損することも多く、昭和時代以降のものにはラッパ形の口や最下部の水をためておく部分が金属製やゴムになり着脱可能になったものや、胴部がプラスチック製に代わったものもあったようです。そのため、この度収蔵させていただいた初期型のガラス製ハエ捕り棒がまったくの無傷であるだけでなく、実際にハエを捕まえた実績のある使用痕跡が観察できるところに、〇博調査員は感銘を受けたのでした。
次に、ハエ取り棒を寄贈いただくきっかけをとなった展示資料、「ハエ捕り瓶」をご覧ください。
←「ハエ捕り瓶」:ハエをおびき寄せて退治するガラス製の道具。瓶の中央に開いている穴の下に煮干しの頭などのハエの餌をのせた紙を置き、容器の中には水を入れ、瓶の口の蓋をしめる。においに誘われ餌を食べに来たハエは飛び立とうとすると瓶の中に入ってしまい、出られなくなり、やがて水に落ちる仕組み。
こちら展示中のハエ捕り瓶は収蔵時には既に蓋が無くなっておりましたが、気泡の入る緑がかった昔のガラスの質感と美しいフォルムに魅了されます。壊れやすいものを日常に使う心構えや丁寧な扱いや動作を実践する暮らしをしていた先人たちに尊敬の念を覚えます。とはいえ、ガラス製の蓋も健在のハエ捕り瓶とのご縁も希望いたしておりますm(__)m。
集蠅力を上げるために、瓶の中に入れる水には酢や酒砂糖などを混ぜたり、米のとぎ汁を使用することもあったようです。瓶の下のエサに惹かれてもぐりこんだハエは、お腹はいっぱいになりますが、上に飛び上がる事しかできないので瓶の中から脱出できずに、そのうち力尽きて水の中に落ちてしまいます。インテリアとしても美しいフォルムとは裏腹に、ハエの習性を利用した科学的でさらに冷酷な面もある道具なんですね。
次に、こちらのハエ捕り装置もご覧ください。
←「ハイトリック」:ハエや蚊を捕る器械。ゼンマイで回転する四角柱に酒や酢・砂糖などを混ぜたものを塗っておくと、においに誘われた虫が止まっている間にゆっくりと箱の中に運ばれて行き、捕まえる仕組み。捕まったハエは、箱から光の差す隣の収容かごに通って移動する。殺虫剤を使用せずに虫を生捕りできるので、捕獲した虫は魚の餌にもなった。
こちらの装置は名古屋の時計屋さんが大正2年に特許を取って製造販売されるようになった有名なハエ捕り器で、捕獲したハエの姿が外から見えないですし、捕まえたハエをかごに誘導する為の採光窓部分にステンドグラスのような装飾をしたり、模様入りの摺りガラスを使用してあり見た目がおしゃれで、料理屋さんや病院の待合室や会社の応接室などによく置かれていたようです。つい先日も、かつて料亭を経営されていた市内の方よりゼンマイのねじも健在の資料を寄贈していただいたばかりです。
伝承館のテーマ展示等に使用する資料のほとんどは市民の皆様からのご寄贈品です。今回の民具に関するテーマ展開催をきっかけとして、文化財としての活用の期待される貴重な資料がまた多数収蔵できました。展示を観てくださった方々、ご寄贈くださった市民の方々に深く感謝申します。
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