牛と馬の道具
こんにちは。
只今、南アルプス市ふるさと文化伝承館ではテーマ展『南アルプス山麓の古代牧』を開催中です。会期は令和5年12月20日までです。 今日は、その中の民具展示コーナーをご紹介します。
←『南アルプス山麓の古代牧』展における民具コーナー
展示している実物大写真の馬の種類は木曽馬です。古代の伝承にある「甲斐の黒駒」の画像はさすがにご用意できませんので、巨摩地域で飼育されてきた実績のある木曽馬の実物大画像を置いています。体高130㎝ほどの低身で頭が低く、お腹が大きくちょっとぷっくりしていて、太く短い首と耳が木曽馬の特徴的な体型です。また、丈夫で、引く力が強く、繁殖力もつよいという長所もありました。 南アルプス市有野で昭和25年頃に撮影された馬耕の様子の画像に写る馬もこの木曽馬だと思われます。 ←「南アルプス市有野で昭和25年頃撮影の馬耕の様子」(名取栄一氏蔵 平成13年白根町発行『夢』より)
←荷鞍(にぐら):馬・牛の背に荷物をのせるための鞍。枠木の内側に厚さ20センチほどの藁を芯に畳表や布でくるんだ鞍床を左右に結いつけている。街道を運ぶときは、1駄(40貫=150㎏)、山道で32貫=120㎏)ほど一頭で運べたという。
←蹄鉄(ていてつ):馬の蹄(ひづめ)の底に打ち付けて蹄を保護し、滑りを防ぐための金具。
←ハミ・轡(くつわ):馬の口にはめる金具で、手綱(たづな)を付けて馬を操るのに必要な道具。口の中にくわえさせる銜(はみ)、その両端に付ける鉄鐶で構成される。古墳時代から使われてきた道具。
←「胸繋(ハモ)」商品名のプレートには『角田式 製造元祖 萬年牛馬鞍 岡山角田農具製作所』とある。
胸繋(ハモ):木材やそりなどの重い荷や、馬耕作業用の道具を引く際に、荷重のかかる馬の首の皮膚への負担を軽減するために用いる装着具。U字型に馬の首に装着する。
←「ハモを装着時の拡大図」(名取栄一氏蔵 平成13年白根町発行『夢』より)
←尻枷(しりかせ):ハモから引いた引綱を両端に縛って牛馬の後方に位置させ、犂(すき)などの農具に取り付ける棒。具体的には、首にU字型に取り付けたハモの左右両側についている金属製の環のそれぞれに引綱を結び、後方に尻枷を装着する。さらに、尻枷の真ん中にある金属製のカギに引っかけて連結した荷や農具などを引かせる仕組み。
←メコ(鐶):くさび部分を木材の端に打ち込み、材木を山から引き出したり、牛馬を柱につなぐときに用いる。
←「尻枷にメコを連結した様子」メコの楔状部品を木材の端に打ち込めば、山から木材を運び出すことができる。
令和5年度の今テーマ展では、御勅使川扇状地での牧(牧場)の存在が平安時代にさかのぼる可能性を示す百々遺跡出土資料の紹介を主眼にご覧いただいていますが、江戸時代以降も続いた牛馬利用の伝統についても言及しています。
そのため、文献資料や出土牛馬骨の分析資料だけでなく、もっと身近に最近まで行われていた牛馬と市民との関わり示す民具も観ていただこうと、昭和30年代頃まで市内で使われていた牛馬に関わる道具も展示致しております。 どうぞ、いらしてください。
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