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2024年12月12日 (木)

昭和26年のきみ子ちゃんの絵日記を読む3

こんにちは。
 今日も、前回からの続きで小学三年生のきみ子ちゃんの日記から、昭和26年6月25~28日のものをご紹介します。
 お父さんとお母さん、そしてお兄さんと弟との5人家族に育ったきみ子ちゃんは、何かしらの家の手伝いを毎日しているしっかりものの女の子です。この絵日記は昭和26年(1951)6月16日から7月1日まで毎日欠かさず書かれたもので、紐で一冊に綴じられていました。6月後半の2週間は麦刈りや田植えの行われる時期ですからちょうど農繁期休みの期間であったと考えられ、ほぼ毎日、家の仕事に勤しんでいる姿が事細かに絵に表現され、その下段に文章がしたためられています。
 また、この絵日記には、昭和26年の櫛形地区の中野の風景や人々の暮らしを物語る細かいデティールが、きみ子ちゃんという、絵の上手な女の子によって素晴らしく表現されています。この資料によって、私たちは、小学3年生の彼女の目や心のフィルターを通して、昭和26年の南アルプス市域におけるヤマカタ(山方)の生活というものを知り、その時代の子供の気持ちを追体験することができるような気がするのです。
100010 ←「昭和26年公子ちゃんの絵日記・6月25日(月)雲雨」(中野上田家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)
 絵の中で、昔から坂道ばっかりの櫛形地区中野の集落の中をきみ子ちゃんがすたすたと歩いています。右手に何か四角いモノを持っていますが何でしょう?文を読んでみましょうね。
 朝十時から書き取りの勉強をしていた聡明なきみ子ちゃんですが、お父さんからハガキを出しに行ってくださいと頼まれたので、勉強を中断して、ポストに向かったようです。その帰りに校長先生に会い、おはようございますと挨拶したことが書いてあります。ポストのある野々瀬郵便局は小学校の向かいにあったので、先生と出会う確率も高かったのでしょう。
100011 ←「昭和26年公子ちゃんの絵日記・6月26日(火)はれ」(中野上田家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)
 今日は、草取りをしているきみ子ちゃんの絵です。
 文には「朝起きると、お母さんが今朝は土がやっこいからみんなで家の下の草を取って下さいといったので、すすむ(弟)が学校へ行くとすぐ、草とりをはじめました。兄さんは、前の河原でどっかのおじさんが水を止めていたので、兄さんは早々飛んで行った。お母さんが今年は水が貴いといった」とあります。おそらく前日に降った雨も畑を少し湿らす程度で水が不足しがちな日和が続いていたのでしょう。
100012 ←「昭和26年公子ちゃんの絵日記・6月27日(水)晴」(中野上田家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)
 この日は石と板と本の絵ですね。
 「今日、私は池でたまねぎを洗っていると、つつじが咲いていたのを見て押し葉にしたくなってつつじを採った。池の所と家の前の所のを採って押し葉にした。それから家の前の所へ行ってきれいな花を採って来た」
 いつも家のお手伝いをしていて忙しい中にも、きれいな花を見て、その心のときめきを押し花にして残そうとする小学三年生のきみ子ちゃんの心意気に、愛しさあふれてたまらないです。
100013 ←「昭和26年公子ちゃんの絵日記・6月28日(木)雲晴」(中野上田家資料・南アルプス市教育委員会文化財課蔵)
 畑の上の電線につばめが三羽いるのを見上げているきみ子ちゃん。畑の土には備中ぐわが刺さっており、作業の途中だと言うことがわかります。
 今日のきみ子ちゃんは午後の昼休みの後、おかあさんと一緒に畑の畝づくりをしたようです。頭の上でつばめが鳴いていたので立ってみていると、電線でつばめたちが飛び上がったりして楽しく遊んでいたのだそうです。
 青い空をバックに木の電柱、そして電線に遊ぶつばめたち。そしてそれを見上げるきみ子ちゃんと備中ぐわ。開放感があって明るい絵なのだけれども、つばめたちの賑やかな鳴き声も聞こえてくるのだけれども、なぜかほんの少しばかりの寂寥感も感じさせるような・・・。とても魅力的な構図ですね。
 
今日はここまでで。
昭和26年6月29日から7月1日までの日記は次回にご紹介します。

 

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