学校が軍の予備校になった(国民学校日誌を読む1)
こんにちは。
今日は、南アルプス市ふるさと文化伝承館令和7年度第1回テーマ展「ぼこんとうとせんそう」より学校日誌という資料をご紹介していきたいと思います。
学校日誌は教師が書き記す日誌のことで、各学校で生徒や教職員の出欠状況、その日の出来事などが毎日記載されます。現在の学校においても行われています。基本的に5年間の保存期間でよいとされていますが、南アルプス市内では過去の古い日誌が断片的に遺され発見された学校がいくつかあり、通報いただいた場合それらを文化財課で収蔵しておりました。
2025年7月現在、南アルプス市教育委員会文化財課では、五明学校、大明尋常小学校・大明尋常高等小学校・大明国民学校・大明小学校・大明農業補習学校・大明夜学会、鮎沢学校、飯野尋常高等小学校・飯野国民学校・飯野小学校・巨摩第一小学校、鏡中條国民学校の日誌を計133冊収蔵しており、その中から戦時下にあたる昭和16年から20年にかけての国民学校時代のものを、個人情報に配慮した上で現在開催中のテーマ展で展示しています。
国民学校時代の日誌には、学校教練や訓話の内容、空襲、疎開、学徒の勤労動員など戦時下特有の様子が記録されていますので、まずは尋常小学校・尋常高等小学校から国民学校初等科高等科に変わった時点から順にピックアップしてみていこうと思います。
昭和16年4月1日より、それまで尋常小学校・高等小学校と呼ばれていた学制が変更され、国民学校初等科・高等科と呼ばれるようになりました。現在の小学校1年生から中学校2年生までの期間にあたります。国民学校に変わるにあたっては、昭和12年に発刊された「國體の本義(こくたいのほんぎ)」という書物の内容が指針となりました。
←「國體の本義」(南アルプス市教育委員会文化財課蔵):昭和12年(1937)に、「日本とはどのような国か」を明らかにするために当時の文部省が学者たちを結集して編纂した書物。神勅や万世一系が冒頭で強調され、共産主義や無政府主義、民主主義や自由主義も国体にそぐわないものとした。この内容と思想を学生や生徒に教育するために、教員採用試験にも多く採用され、昭和16年3月1日に公布された国民学校令により尋常小学校は国民学校として再編成された。 国民学校では、子どもたちには自分たちの国を守るために戦うこと、戦地で働く人々のために倹約に努め、銃後の守りを整えることといった、国家総動員精神での戦時体制を担う国民を作るという教育方針を強化していきました。国民学校令第一条には、『國民學校󠄁ハ皇國ノ道󠄁ニ則リテ初等普通󠄁敎育ヲ施シ國民ノ基礎的󠄁鍊成ヲ爲スヲ以テ目的󠄁トス』とあり、戦時体制下にあっては学校が軍の予備校としての役割も果たすことになりました。
例えば、子どもたちが楽しみにしている遠足行事は、『(大明国民学校)昭和16年10月31日心身鍛錬を目標トセル秋季遠足ヲ行フ』『(大明国民学校)昭和18年10月25日軍事訓練目的の遠足実施』というように心身鍛錬や軍事訓練の目的のためと明記されるようになりました。
さらには軍の予備校としての役割を果たすため『(鏡中條国民学校)2月3日雪中行軍雪合戦ヲ行フ』『(飯野国民学校)昭和19年8月22日酷暑行軍訓練行フ』『(大明国民学校)昭和20年1月20日耐寒心身鍛錬ノタメ少年団全員増穂南湖方面に行軍ヲ行フ』といった行事も行われています。他にも、『(大明小学校)昭和18年10月22日空襲避難訓練』『(大明国民学校)昭和19年5月18日空襲時における登下校の避難訓練実施』などが行われるようになり、空襲が身近にある中での学校生活を感じさせられます。
さらには軍の予備校としての役割を果たすため『(鏡中條国民学校)2月3日雪中行軍雪合戦ヲ行フ』『(飯野国民学校)昭和19年8月22日酷暑行軍訓練行フ』『(大明国民学校)昭和20年1月20日耐寒心身鍛錬ノタメ少年団全員増穂南湖方面に行軍ヲ行フ』といった行事も行われています。他にも、『(大明小学校)昭和18年10月22日空襲避難訓練』『(大明国民学校)昭和19年5月18日空襲時における登下校の避難訓練実施』などが行われるようになり、空襲が身近にある中での学校生活を感じさせられます。
授業では新たに武道も取り入れられ、男子には学校教練において木製の銃型を使った訓練、女子には薙刀の訓練が取り入れられました。昭和19年4月17.18日の飯野国民学校日誌には「職員の薙刀講習」の記述が見られます。そのほかの武道では、『(大明国民学校)昭和18年1月30日銃剣道の耐寒練成会』『(大明国民学校)昭和19年9月7日ヨリ三日間相撲道講習会』などの記述もあります。
←木製薙刀(長さ183㎝)(南アルプス市教育委員会文化財課蔵):薙刀の訓練に使う木製の薙刀。昭和16年の国民学校令台12条によって女児に薙刀の授業が課された。女子武道として、体力向上、精神力倍増等の目的で授業に採用された。展示品は女学校か高等小学校用の長さ。 木銃(長さ167㎝)(南アルプス市教育委員会文化財課蔵):銃剣術という武道の訓練で使用するもの。銃剣術とは、近接戦闘で相手を突き刺す武器を操るための訓練として生まれた武道。実戦では歩兵銃に短剣をつけて戦う。子どもたちに兵隊になるための訓練を行う学校教練で使用された。
上記のような流れで軍の予備校としての役割をもたされてしまった学校の様子を、次回からも国民学校日誌に記載された内容から読み解いていきたいと思います。
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