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2025年10月

2025年10月23日 (木)

大正・昭和時代の国勢調査員たち

こんにちは。

今年の秋は国勢調査が行われましたね。ということで、今回は国勢調査にかかわる資料をご紹介していこうと思います。

国勢調査は、日本に住むすべての人と世帯を対象に、5年ごとに行う統計調査です。日本で初めて国勢調査が行われたのは、大正9年(1920)のことです。始まってからもう100年以上が経過しています。

まずは、大正九年に行われた第一回時の国勢調査員たちが残した資料をから見ていきましょう。

J06t120221 ←大正12年2月21日中巨摩郡第一回国勢調査員宮城拝観記念  湯沢依田家資料(南アルプス市教育委員会文化財課蔵)

J326 ←大正12年2月21日中巨摩郡第一回国勢調査員宮城拝観記念  古市場藤巻家蔵

 初めての国家的大規模調査の最前線を担った中巨摩郡の国勢調査員たちを慰労するためなのか、大正12年に皇居(宮城)を拝観する旅行が行われたようです。第一回調査から2年余りが経過し、国としては、次の大正14年に行う第二回国勢調査が2年後に迫った頃で、次回の調査も協力を頼みますよ、というような意味合いもあって行われた行事だったのでしょうか? 

 ほかの地区ではどうだったのかと少し調べてみると、同じ山梨県の東山梨郡第一回国勢調査員宮城拝観は中巨摩郡が拝観した翌日の大正12年2月22日だった他、ネット検索だけでも、岩手県種市村では同年6月14日、神奈川県大磯町では同年8月27日などの宮城拝観日の記念写真や記録が出てきますので、どうやら、大正12年に第一回国勢調査員の皇居拝観が全国的に行われたようですね。

 また、第一回の調査員に授与された記念品も収蔵資料にありましたので、ご紹介しておきます。

M4949 ←第一回国勢調査記念品:朱塗りの三重木盃で、金色の鵄(とび)が止まった弓を持つ神武天皇が描かれている。沢登斎藤(昭)家資料 (南アルプス市教育委員会文化財課蔵)

 

Photo_20251023162601 ←大正14年10月1日西野村第二回国勢調査記念  西野芦澤質屋家資料(南アルプス市教育委員会文化財課蔵)

 大正14年の第二回国勢調査では、国勢調査で唯一、集計までを地方で行ったのだそうです。

 

戦後の高度成長期に入り、人々の暮らしや家族の在り方が大きく変化していく昭和30年代の国勢調査員の残した資料も収蔵しています。

Dsc_1533 ←昭和30年第8回国勢調査員資料 上今諏訪手塚家資料 (南アルプス市教育委員会文化財課蔵)

Dsc_1536 ←昭和35年第9回国勢調査員資料 上今諏訪手塚家資料 (南アルプス市教育委員会文化財課蔵)

 令和時代の調査ではインターネット回答が推奨され普及してきました。

 国勢調査によって、時代とともに次々と変化していく日本の国の有り様を把握する意義は大きいですが、近年はプライバシー意識の高まりなどに伴って、回収率は低下している模様です。国勢調査員の職務の難しさはますます高まっていくのでしょうね。

2025年10月17日 (金)

バス停で(野牛島・小笠原下仲町・鮎沢)

こんにちは。

今回は、南アルプス市ふるさと○○博物館が市民の皆様のご協力により収蔵した古写真のデータの中から、昭和20~30年代のバス停前でのスナップをご紹介します。

111 112_20251017093401 ←「小笠原下仲町バス停」昭和20年代末頃 吉田名取家蔵

Photo_20251017093401 ←「野牛島バス停(矢崎商店)」昭和20年代末頃 野牛島金丸家蔵

110 ←「バスでお出かけ」昭和30年代頃 吉田名取家蔵

159 ←「鮎沢バス停」昭和30年代半ば 古市場藤巻家蔵

 昭和30年代まではまだ自家用乗用車は普及しておらず、自宅から鉄道駅や周辺の繁華街に出かけるための交通手段は、自転車か路線バスでした。マイカー時代が到来するのは昭和40年代に入ってからです。

 現在は、特に地方都市では、成人一人に一台の体制で車を保有する家庭も多く、路線バスを利用する機会がほとんどないという方もいらっしゃるかもしれませんね。

 でも、昭和時代のバス停前の風景をみると、人々が挨拶しあったり、会話したり、バスを一緒に待つ時間にきっとここでいろいろな出会いもあって、心が豊かになるような出来事もあったのだろうなぁと想像して、古い写真が伝えてくれる当時のワクワク楽しげな空気感に癒されるのでした。いつもは車を運転して行ってしまう博物館に、今度の休日には、久しぶりに路線バスに乗って行ってみようかな!

 

2025年10月 3日 (金)

講堂にはミシンがズラーっと!軍服のポケットを縫った巨摩高女時代

こんにちは。

7月の終わりに、南アルプス市内生まれ在住で昭和5年生まれ(94歳)のユキエさんに、戦時の記憶をお聴きしました。きっかけは、ふるさと文化伝承館で令和7年6~8月に開催していたテーマ展「ぼこんとうとせんそう」に、ユキエさんがご家族と見学にいらしてくださったことでした。

Kimg6598   ←南アルプス市上市之瀬生まれ在住で昭和5年生まれ(94歳)のユキエさん

その際解説した伝承館スタッフに、ユキエさんがご自分の戦時体験を少し話してくださったのです。興味深い内容だったので、オーラルヒストリーとして記録させていただきたいと考え、改めてお越しいただき録画しながらお聴きすることにしました。あわせて、アルバムに残るユキエさんの足跡も同時にデータ収蔵させていただくことにご同意いただきました。ユキエさんとそのご家族のご協力に、心より感謝申し上げます。

Img_1866 Img_1867 ←2025年7月29日南アルプス市ふるさと文化伝承館にて聴き取り。 調査時にはご長女とご長男が同席してくださった。

 ユキエさんは、昭和5年に市内上市之瀬に生まれ、野々瀬国民学校から山梨県立巨摩高等女学校へと進学しました。

210 ←野々瀬国民学校初等科五学年集合写真(おそらく妙了寺で撮影)

ユキエさん『国民学校時代に行ったロタコ(南アルプス市で戦争末期に建設されていた飛行場での作業)では、飛行機を隠すために大人が掘っていた横穴壕から掘り出される土を袋に詰めて捨てに行く作業をしました。子供ながらに、子どもだからこんな少しづつしか運べないのに、(飛行場はほんとに完成するのだろうか?日本は)大丈夫なんだろうか?と思いました』とのこと。国民学校では、ロタコ以外にも、川向こうの玉幡飛行場での石拾い(砂利運び)にも駆り出されたそうです。

222 215 ←巨摩高等女学校生当時のユキエさんと同級生

 巨摩高等女学校に進学すると、『講堂にミシンがズラーっと並べて置いてあって、軍服のポケットの上蓋にあたる部分を積み上げるほど毎日ひたすら縫う時間があった。その際、軍服を着た監視の人が座席の間の通路を歩いてずっと監視していたから、何か嫌だった思い出がある。』といいます。戦争中は授業などほとんど受けずに勤労動員ばかりさせられていたようです。

その他にユキエさんが話してくださった、巨摩高等女学生の頃の思い出を聴き取りメモより以下に列記しておきます。同じ巨摩高等女学校に戦争中に通っていた2歳年上のお姉さんが軍需工場で働いていた時の話、学校の校庭の防空壕に隠れた話のほか、うれしかった女学校時代の思い出、戦後の天皇御巡幸の様子など興味深い話題です。

『体育の時間には、校庭の固い土を耕してさつまいもを植えた。農業の先生としてハナワ先生という人が来て教えてくれた。』

『2歳年上の姉(タツミさん)も巨摩高女だった。姉は女学校のそばにある2階建ての寄宿舎にいて、そこから近くの花輪製糸の工場に動員されていた。パラシュートの部品をつくったことを聞いている。』

『昭和20年7月6日の甲府空襲の時には、野々瀬から甲府方面がとても明るくなっているのを山の間に見た。甲府空襲の夜は姉のタツミさんは巨摩高女の寄宿舎にいたので心配だった。』

『荊沢空襲のあった時(昭和20年7月30日)には在校時で、校庭の周りに植えてあるサクラの木の根元に掘った防空壕に入った。学校には爆撃されなかったが、防空壕に入る前にすごい低空飛行で米軍機が通り過ぎるのを見た。その翌日か数日後に、荊沢のあたりで子どもの犠牲者が出たことを聞いた。』

『在学時に学校から甲府の貢川の方向に行くマラソン大会があって、お姉さんのタツミさんが1位で、ユキエさんが10位だった。1位のお姉さんへの賞品は体操着で、10位の幸枝さんには運動靴がもらえた。実際には引換券がもらえて、後に小笠原の商店へ行って実物をもらうスタイルだった。』

『戦後に昭和天皇が戦後巡幸で(1947年10月14日)巨摩高等女学校にいらしたときは、校庭の土の上に額を押し付けるようにしてひれ伏して迎えた記憶がある。何も考えずその時は先生に言われるままそうしたね。』

213_20251003103401 ←巨摩高等女学校華道部 昭和23年3月 :戦後とはいえ、セーラー服の上衣にモンペと草履であわせているのがかわいらしい。

 以上のように、ユキエさんからは貴重なオーラルヒストリーの数々を収蔵させてさせていただきました。本当にありがたいです。

 これに加えて、もし山梨県立巨摩高等女学校の戦時期の学校日誌が存在するのであれば、ユキエさんの過ごした戦時・終戦直後の女学校生活の実態がもっと明らかになる可能性がありますよね。特に製糸工場でパラシュート製造に動員された事実については、今後もっと情報や証言が収集できるといいなと思いました。今後の史料発見に期待しましょう。

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