昭和20年代の十日市と比べてみよう
こんにちは。
山梨県南アルプス市十日市場で、2月10日を中心に開催されてきた十日市は、戦国時代にはすでに行われていた、歴史ある市です。十日市場にある安養寺に安置された鼻採地蔵さんの縁日に開かれてきました。縁起物のだるまや、臼や杵などの木工品、ざるや味噌漉しなどの竹細工、様々な食べ物の露店が並び、甲府盆地最大級のお祭りといわれています。かつては、『甲州に春を告げ、売っていないものは猫の卵と馬の角』といわれたくらい、数多くの露店が並びました。
←十日市場安養寺の入り口(2024年2月10日撮影)
今回は、収蔵資料の中から。昭和20年代に撮影された十日市を愉しんだ人々の様子をご紹介したいと思います。
←昭和20年代の十日市の様子と縁起物を売る露店 (西野芦澤家資料より 南アルプス市文化財課蔵)
こちらの画像では、縁起物が多数ぶら下がった巨大なビラビラかんざしのような飾り物が写っていますね。とても素敵なのですが、現在ではあまり見かけないような気がします。
←2024年2月10日十日市で売られていた飾り物
←今も昔も十日市で売られる縁起物のダルマ。(2024年2月10日撮影)
←かつては綿と繭の豊産を願って白いダルマがよく売れたという昭和40年代の十日市「やまなしの民俗」上巻 昭和48年 上野晴朗著より
←昭和20年代の十日市の様子(西野芦澤家資料より南アルプス市文化財課蔵)
こちらの写真では、人混みの中、はしごを担いで歩いている男性がいます。かつての十日市では、山方に住んでいる人々が造った木工品を買うのを目的に来る人も多く、現在でも餅を搗く臼と杵は売られているのは目にします。しかし木製から金属製が主になったはしご等の多くの道具は販売されなくなったので見かけることもなくなりました。販売される木工品の種類が減っているのも現在の状況ですね。
←2024年2月10日十日市で賑わう人々
←昭和20年代の十日市から歩いて家に帰る人々(西野芦澤家資料より 南アルプス市文化財課蔵)
昭和20年代のモノクロの写真にうつる方々は、お住まいだった白根地区西野から歩いて若草地区で行われる十日市に行ったようです。愉しそうに歩く人々の後ろには市之瀬台地がしっかり見えます。何も買わなかったのかもしれませんが、楽しかった十日市からの帰り道の一枚でしょう。みな洋服を着ているのに足元は草履か下駄なのが面白いですね。また、道は一面の桑畑の中を通っていて、養蚕がまだまだ盛んであった頃であるのを示しています。スプリンクラー網が南アルプス市に張り巡らされるのは昭和40年代初めですから、この写真では、果樹の姿は見えません。
←コロナ自粛前(2020年2月11日撮影)
現在でも人々は車をちょっと離れた駐車場に停めて歩いて十日市に向かうわけですが、その道の両脇には、桑畑ではなくて果樹園地が拡がっています。十日市に向かう人々のウキウキした気持ちは今も昔も変わらないのに、その背景には時代の変化がちゃんと写し出されていて興味深いです。